現在、日本での部位別がん死亡数では、大腸がんは男性で第3位、女性では第1位であり、全体では胃がんを抜き、肺がんの次に多い第2位です。
平成29年の秋田県内のアンケート調査では、大腸がんが死亡数第2位であることを知っていたと答えた方は32.7%と3分の2以上の方が知らなかったとのことです。同様に女性のがん死亡数第1位が大腸がんであることを知っていたのは、27.3%の方にとどまっていました。
これは我々、がん診療に携わる医師としては憂うべき結果であり、大腸がんの啓蒙活動として今回はこの記事を書かせていただきます。
大腸がんにかからないようにすることは可能でしょうか?
食事に気を付ける?便秘しないように心がける?いえ、現時点では完全に防ぐ策はありません。
実験的にアスピリンというお薬が大腸ポリープ(大腸がんの前段階とも言える病気です)の発生を抑制するという論文は出てきていますが、実用化にはまだ遠い状況です。
では我々にできることはなにかと言えば当然のことながら早期発見・早期治療ということに他なりません。
病気にかからないことを1次予防といいますが、早期発見・早期治療は2次予防といわれています。大腸がんの場合、この2次予防が非常に重要です。それは大腸がんは早期に発見すれば完治できる病気だからです。
こちらの図をご覧ください。ステージとはがんの進行度を表しています。
5年生存率とは完治の目安といってよいでしょう。大腸がんはステージ2までの、早期がんから進行がんについて90%以上完治が目指せる病気です。
また、内視鏡でみつけることができるごく早期のステージ0のがんについては内視鏡的手術によって、腸を切除するなどの外科的をせずにほぼ100%完治できます。言い換えれば定期的に検査を受けて、がんの早期発見ができれば大腸がんで命を落とすことは抑えられるということです。
では、早期発見のために必要な検査とは何でしょうか。
一番簡単な検査は便潜血検査という2日分の便を採取して行う検査です。内視鏡検査などよりは精度は落ちますが、無症状の方はこの検査だけでも毎年受けることをお勧めします。
次により精密・正確な検査としては、大腸内視鏡検査です。特殊な下剤を飲んでもらい腸を空っぽにした状態でお尻から内視鏡を挿入し全部の大腸をくまなく観察します。この検査では非常に早期の段階でがんを見つけることも可能です。
便潜血検査で陽性となった場合、お腹の具合が悪いなどの症状がある場合、以前大腸ポリープなどの病気を指摘されたことがある場合などは内視鏡検査を受けることをお勧めします。
大腸の検査は恥ずかしいし、面倒くさいなど皆さん受けたがらないのが現状です。我々消化器内科の立場から言わせていただくと非常に勿体ないことです。まずはお気軽にかかりつけの先生にご相談して、是非大腸内視鏡検査を受けてもらい、大腸がん死亡率が少しでも下がることを切に願っています。
ひかり桜ケアクリニック
院長 髙木亮